12月のプチ防災「ついに日本も防災庁設置へ~防災先進国イタリアから学ぶ」
日本は間違いなく自然災害大国である。毎年のように、地震、台風をはじめ、大きな自然災害があちらこちらで起きる。被災した地域は運が悪かったのか。自然災害をなくすことはできるのか。災害大国である日本が防災後進国であることを見れば、目指す方向は自然と決まってくるはずである。
自然災害を防ぐことはできない。だとすると、防災を内閣府の臨時対応でなんとかなると考えている時点でありえない話。 この度、政府与党は、災害対策を取り仕切る内閣府防災部局の定員(110人)と、予算(本年度73億円)を2025年度に倍増させる方向で最終調整に入った。石破首相が26年度と明言する防災庁設置に向けた体制強化の一環である。
プッシュ型の支援を悪く言う人もいるが、民間のボランティアと行政が連携するシステムが確立されることが重要なのであって、どちらかだけではダメという話だ。
私は、防災先進国としてイタリアを真っ先に挙げる。まずは、先進国のシステムをしっかりと学び、災害に強いシステムを作っていってもらいたい。
日本が取り入れたいイタリアの防災システムを紹介する。
- 市民保護省 国や各地方に設置された災害監視、災害対応を担う防災機関。防災専門の職員が数百人勤務し、災害時はすべての省庁の連絡調整をする対策本部として機能する。
- ボランティア団体(NPO・NGO) 日本との決定的な違いはその人数。防災ボランティアの登録者数は約百万人。個人ボランティアではなく、キッチンカーで料理を提供できるプロの料理人、避難所の設置に派遣される電気工事や水道工事、通信工事のプロなど、仕事がそのまま防災に直結する人々を登録している。日ごろは自分の仕事をしながら、災害時は1週間ほどのボランティアが仕事になる。市民保護省からの要請を受けたNPO・NGOを通じて出動することになる。
- 備蓄 プッシュ型支援の中核となる大規模な倉庫を各地に備える。テント、簡易ベッド、トイレ、シャワー、水、食料、毛布などが運び出される仕組みになっている。
- 科学技術研究所 市民保護省やボランティア団体に対して事前の災害対策や、災害時の対応策などのアドバイスをする機関。
- 避難所 日本では体育館などをイメージするが、イタリアでは家族単位で利用できるテント村や、国の支援金でホテルに宿泊することが多い。
日本との違いをまとめると、日本の内閣府はそもそも防災専門の機関ではない。したがって、常時防災に関わる仕事をしているわけではなく、結果として非常時の対応となるのだが、そもそも自然災害は日常的に起きるものである。イタリアの市民保護省は年中無休(365日24時間)なので、能登半島地震のように「元旦だからすぐには対応できない」とはならない。
日本のボランティアも「全国災害ボランティア支援ネットワーク」など頑張っているが、基本的には個人の献身である。大学生がボランティアに参加しようとしても、単位を落とすからとか、旅費が出せないからといった理由で参加できないことも少なくない。予算や人員確保に改善が求められる。イタリアでは、仕事を休んでボランティアに行った期間の給与が補償されるのでその差は歴然。
日本では、被災地域の住民がボランティアとして頑張るシステムがある。先日も防災訓練を実施したが基本は地域住民による共助だ。イタリアでは、被災地域の住民が頑張るのではなく、速やかに近隣地域からの支援が義務付けられている。ボランティアの広域ネットワークが重要だと思うが、広いエリアをカバーできる大きな組織にはなっていない。
防災庁のような災害対策専門の組織を設置し、地域の防災ボランティアとの連携ができるシステムをできるだけはやく作るとともに、ボランティアの人員確保ができる法の整備等が必要と考える。
「バヌアツの法則」によると、今年中に日本に大きな地震があるらしい。「こんなのは、都市伝説だから関係ない」「デマだ」と知らん顔をするのは防災対応としては違うと思う。科学的には怪しい情報だが、いつ何時でも備えておくのが基本なわけで、「関係ない」というのではなく、「いつでも備えてますよ」と言えるようにしたい。