9月のプチ防災『震源と震源域』
元日の能登半島地震に続き8月8日には日向灘を震源とする最大震度6弱、翌9日には神奈川県西部を震源とする最大震度5弱の地震が発生しました。
特に8月8日の地震は想定される南海トラフ巨大地震の想定震源域に近く、『南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が初めて発表され、社会生活に大きな不安と動揺を招きました。
お盆の前後に、防災に関してあまり知識のないかたと話す機会がありました。
その中でいろいろと思うことがあったのですが、特に地震に関する用語の意味などが一般のかたには知られていないことを痛感しました。
最近の地震に関する報道においては、『震源地』という用語が使われることが少なく、代わって『震源』あるいは『震源域』が多いと感じています。
イメージしてみてください。
たとえばパンパンに膨らませた風船を高く持ち上げ、空中で針を突き刺したとします。
パーンと弾けて、その音は前後左右上下3次元の全方向に広がっていきます。
これと同じように、地下深い場所の1点で爆発的な何かが起き、それが全方向に広がっていくのが地震であると思っていらっしゃるかたが多いのではないでしょうか?
お盆前に話したかたは、南海トラフ巨大地震の想定震源域のどこか1点で爆発的な何かが発生する。
その1点が必ずしも広島に近い位置とは限らない。
したがって南海トラフ地震が発生したとしても、広島では被害が出るような揺れはない。と、こんな論調で熱く語られておりました。
たしかに地震を伝える報道では、地図上に✕印が打たれ、「震源は〇〇〇、震源の深さは△△キロ」というような表現がなされています。
ここだけを切り取って見れば、地下深さ△△キロで爆発的に巨大なエネルギーを持つ何かが起こり、それに起因する揺れが同心円(同心球?)状に広がり、地表での揺れが地震であるかのように誤解を生ませているように考えています。
実際には深さ△△キロは1点の爆発的事象ではなく地震の原因となる断層の破壊が始まる点であって、そこから広がった大きな断層の破壊が地震として地表に伝わっているのです。
地震発生のニュースでは、合わせて「地震の規模を示すマグニチュードは〇.○と推定されます」というようなことが伝えられます。
大雑把な言い方になりますが、このマグニチュードが上記の破壊された断層の面積にほぼ比例します。
したがって、地震を伝えるニュースは、地図上に断層の破壊の出発点である『震源地』に✕印を打ち、断層が破壊されたと推定される範囲を『震源』もしくは『震源域』として、色を変えるとか斜線で表現するなど明示すれば良いのではないかと考えています。
震源域は必ずしも地表と平行ではなく、ほとんどの場合はかなりの角度で傾いているため、平面の地図に震源域を重ねると実際よりはるかに小さく狭くなって見えてしまいます。
ネットで『南海トラフ地震の想定震源域』と検索すると様々な画像などがヒットします。
多少の誤差はあるものの、東は静岡県沖から西は宮崎県沖の非常に広い範囲が震源域と想定されています。
東海地方、近畿地方、四国では陸地にも広がっています。
その範囲の中の1点で爆発的な事象が発生するのではなく、最悪の場合はこの範囲全ての断層の破壊(プレート境界のずれ)が発生し、マグニチュード9クラスの巨大地震を引き起こすことになります。
広島市を起点に考えると、想定震源域の最も近い所まで100キロもないかもしれません。
震度6弱、6強の揺れは広島市も襲います。
震度7も想定外とは言い切れないかもしれません。